最もホットなBtoB向けクラウドサービスピックアップ

 addlight journal 編集部

こんにちは。最近はBtoBのクラウドサービスについて、事業開発/業務改善関連のプロジェクトや支援先スタートアップなどで接することが非常に多く、本日はそのトレンドについて、日本より先行しているアメリカのスタートアップの事例をいくつか紹介させて頂きます。

この領域に注目が集まっている理由についてはご存知の通りかと思います。例えばBtoB企業(サービス提供側)の場合には、既存の提供サービスをクラウド化して提供することにより、安価で使い勝手の良いサービスを最近のテクノロジーを活用して提供することができます。一方でユーザ企業(サービス享受側)にとっても、既存のマニュアル作業(社外、社内)をクラウドに置き換えることにより業務を自動化かつ効率化できたり、ITシステムという観点からは従来のオンプレミスのシステムを導入する場合に比べて初期コストが抑えることや、スイッチングコストが低く(いつでもはじめられていつでもやめられる)、部署単位やプロジェクト単位での導入も検討しやすいことが挙げられます(社内の情報システム部門の役割も従来のトップダウン的な役割から変化していますが、このあたりの話はまた改めて)。スタートアップという文脈においては、BtoCと比較しても、早期の黒字化が見えやすくてボラリティリティも低く、またロジカルに事業計画を立てて事業推進しやすいため、BtoBビジネスの経験値のある起業家や、堅実なリターンを志向する投資家と相性が良いことが上げられます。


さて、少し前(2015年3月)のforbes記事に、BtoBクラウドサービスのTop100というものがあります(下記)。


The Top 100 Cloud-based Enterprise Software Startups Of 2015

まず概況として、2014年度後半については、スタートアップへの投資額ではsoftwareの領域が一番大きく計10B USD近くにも達するとのことです。そして、資金調達額でのBtoBクラウドサービス領域のスタートアップが100位までランキングされています。これを見ると、この時点で1B USD以上調達したスタートアップが2社あります。1位がHadoopなどのビックデータ解析基盤を企業向けに提供するcloudare社、2位がクラウドデータストレージを提供するDropbox社です。ちなみに、Dropbox社はAirbnb社と並びY Combinator(以下YC)の代表的な卒業チームであり、DropboxのチームがYCに入ったときのapplicationは今でもお手本として公開されています。

この資金調達額をベースにランキングを見てみると、上位にはどうしても多額の設備投資が必要なデータベース系のスタートアップが多くなってしまいます。サービス系のトレンドも抽出すべく、ここでは、BtoBスタートアップの情報メディアであるMattermark社が独自のmetricsやKPIで算出しているgrowth scoreを基に、このスコアが1000以上の上位企業についてソートしなおしたものが下記です。この上位から順番にみていきたく思います。

Cloud-Based Enterprise Software Startups Ranked by Mattermark Growth Score

  1. Kony Solutions:モバイルアプリケーションを開発するためのプラットフォームを提供しているスタートアップ。アプリ開発に必要な基盤やデータベースから作成ツールや管理ツールまで一式提供しており、色々なモバイルデバイスやブラウザにも広く対応している。
  2. Zenefits:人事関連の業務一式をクラウド上で完結するクラウドサービス。いわゆる給与計算・支払や勤怠管理、保険関係の事務処理を基本的に全て無料で提供している。収入はプラットフォーム上で比較見積できる健康保険会社からの販売手数料がメイン。
  3. Atlassian:こちらはアメリカではなくシドニーに拠点のある、主にエンジニアやプログラマ向け開発管理サービスを提供している。アジャイル開発を念頭においた開発ツールや管理ツールも多いが、非開発者向けのコミュニケーション・プロジェクト管理ツールも販売する。
  4. Dropbox:前述のとおりクラウドデータストレージを提供。BtoCのエンドユーザー向けにもサービス提供しているが、BtoB向けには企業内での共同作業のための機能や、権限管理・認証機能なども充実している。この領域は近年競争が激しくなっているが、先行的に事業をスタートさせ事業拡大している。
  5. Pure Storage:クラウドデータストレージを提供。全てのストレージをフラッシュメモリで構成し、高性能かつ高速の処理を安価で提供する。同社のFA-400というデータベースは、 NANDフラッシュの高性能を享受しながらも、容量単価をHDD並みに抑えることができるとのこと。
  6. Slack:企業でのチーム内コミュニケーションサービス。UIがシンプルで色々なデバイスで利用可能であり、他のクラウドサービスとの連携もスムーズに行うことができる。日本でもベンチャー企業を中心にSlackを活用している企業が増えている印象があります。
  7. Domo:ビジネス管理のクラウドサービス。色々なデータソースからデータを中手し一元管理を行い、SFA機能やオンラインマーケティング管理や財務系のBI機能など充実しており、 ビジネスの管理や意思決定に役立てることができる。日本ではIT系大手企業を中心に導入が進んでいる模様。
  8. Nutanix:Google出身のエンジニア達によって設立されたスタートアップで、 サーバとストレージを1つのアプライアンス(高さ約9センチ、横幅約4.3センチ、奥行き75センチ)に集約した仮想化基盤を提供する。 筐体が小さく、シンプルかつスケーラブルに運用できデスクトップやサーバの仮想化が可能になる。
  9. Mulesoft: クラウド、オンプレミス問わず、システムをAPI連結させる統合プラットフォーム Anypoint Platformを提供。 SaaSアプリケーションなどを接続することで企業内の業務を合理化することが可能になり、米国の多くの大手企業が導入しているとのこと。
  10. Mirantis:OpenStackと呼ばれる、オープンソースで開発されているクラウド環境構築用のIaaSソフトウェア群の提供を行う。手掛けた開発は全て オープンソースとしてOpenStackプロジェクトへ還元しており、OpenStack専業としてトップを走る。

11.DigitalOcean: 開発者が簡単に使えるためのクラウド基盤の提供。 55秒でSSDによるクラウドサーバの設置が可能。仮想サーバを中心に機能を絞り込み、時間単位で利用することができる。金額も安価で日本でも他社クラウド基盤からの乗り換えが増えているようです。

12.Medallia:カスタマーエクスペリエンスを管理するクラウドサービスCEM (Customer Experience Management)を提供しており、企業が調査を設計して送付し回答を回収したり、各種データ分析することによりリアルタイムでのカスタマーエクスペリエンスの改善を支援している。

13.Optimizely:ウェブサイトや広告のA/Bテストを簡単に行うことができるクラウドサービス。このチームはY CombinatorのYC W10の出身チームであり、サンフランシスコの中心にオフィスを構える。フリームアムのモデルで、既に全世界に拠点をもち展開している。

14.Taulia:電子請求書のクラウドサービスを提供しており、更にはサプライヤーとバイヤーとの間で決済(ファクタリングによりサードパーティの干渉も可能)。SAP JAPANのページにも日本語の解説があるのでご参考までに。

15.Docusign:オンライン上で契約書にサインができるクラウドサービス。自分のサインは登録しておくことができる。日本からも米国三井物産、NTTファイナンス、リクルートホールディングスなどが投資している。自分も海外(スタートアップ)との契約の際に使うことが多い便利なサービスです。

16.Metricstream: 経営の意思決定効率を高めるための統合的リスク管理手法であるGovernance, Risk, and Compliance (GRC)に関するクラウドサービスを提供。業界ごとまたはテーマごとに、リスク管理を効率的か自動的に実行しモニタリングすることができる。

17.SimpliVity: アプリケーションやサービスの柔軟な拡張ができるように、サーバやストレージからハイパーバイザーベースの仮想化基盤まで、ハイパーコンバージド(超垂直統合型)とよばれるインフラストラクチャによって、全てをひとつの製品にコンパクトにパッケージ化して提供している。

18.Anaplan:財務、販売、購買、人事、マーケティングなどの各種計画を立案することができるクラウドサービスを提供。計画機能は各部署の情報共有やコラボレーションが必要になるが、それをモデリングの機能によりクラウド上でプランニングを行い、それをBIインターフェースによって活用することができる。

19.Blue Jeans Network:オンラインビデオ会議プラットフォームの提供。色々なデバイスでのビデオ会議はもちろんのこと、スクリーンの共有や録画、カレンダー管理や会議分析などの機能も備える。新しくハードウェアを購入することなく利用することができる。

20.SolidFire: オールフラッシュで設計されたクラウド用の構成のストレージ。どの容量からでもスタートでき、必要に応じて拡張が可能であり、 ストレージのプロビジョニングや、運用、レポーティングなどを自動化に制御し、管理画面から確認することができる。

21.Elasticsearch: オープンソースのサーチエンジンであり、 設定が簡単で使いやすい全文検索エンジンである。内部でJava実装のLuceneを利用しており、同じく同社が提供するKibalaと呼ばれるログデータの可視化ツールと連携して活用することも可能。

22.Github: ソフトウェア開発プロジェクトのための共有ウェブサービスであり、Gitバージョン管理システムを行うことができる。Ruby on RailsおよびErlangで記述されている。日本でも開発者によって自己紹介的に使われたり、システム開発企業での開発案件管理でも多く使われている。


以上、Mattermark社のgrowth scoreが1000以上の上位企業を紹介させて頂きました。前回のZenefitsや今回のTauliaなどはビジネスモデルとしても先進的であり、23位以下もサービスとして斬新なBtoBクラウドサービスがありそうですので、こちらも機会があれば見てみると面白そうです。