提案依頼書が必要な4つの理由

 addlight journal 編集部

はじめに

本コラムでは、提案依頼書をこれまでに作成したことがないという方を主な対象として、提案依頼書の作成が必要である4つの理由について述べています。そもそも提案依頼書とは何か、そして提案依頼書に時間と手間をかけてまで作成する4つの理由について述べてまいりたいと思います。はじめに、提案依頼書とはそもそも何であるかについてみてみましょう。

提案依頼書とは何か

提案依頼書とは、自社に必要なシステムの仕様を定め、外部のソフトウェア開発会社に提示する文書のことをいいます。提案依頼書は、Request For Proposalの略称でRFP(アール・エフ・ピー)とも呼ばれます。その目的とは、自社の求めるシステムの仕様にもっとも適合した製品あるいはサービスをソフトウェア開発会社より提案してもらうことにあります。提案依頼書は、外部のソフトウェア開発会社へ”提案”を”依頼”するための文”書”であることから「提案依頼書」と呼ばれています。また、ソフトウェア開発会社へ提案を依頼する行為を「提案依頼」といいます。

おおまかな提案依頼の流れとしては、自社が必要なシステムの仕様を記載し、提案依頼書の送付先候補として事前に挙げておいた複数のソフトウェア開発会社へ文書を提示し、あらかじめ定めておいた期日内に提案書および見積書を返送してもらいます。その後、自社内で提案内容および見積り内容を評価し、自社のシステム仕様にもっとも適合する製品およびサービスを選定します。

なお、本コラムでは提案依頼書の対象物を情報システムに限定していますが、実際には公共工事の入札や、製品以外のサービスの購入選定でも用いられることがあります。情報システム以外の場合においても、提案依頼書に建築物の仕様を定めたり、求めるサービスの内容を定めたりして、外部の建設業者などへ送付して、提案書と見積書を返送してもらいますので、提案依頼書の対象物が異なる以外のおおまかな流れと活用方法はシステムの場合と同様です。このように提案依頼書の活用範囲はとても広いといえます。では、自社が必要な購入対象の全てにおいて提案依頼書を書くべきなのでしょうか。次に、提案依頼書が必要となるケースについてみてみましょう。

提案依頼書は導入するシステムの全てにおいて必要か

少し極端な例になるかもしれませんが、会社が購入する文房具に提案依頼書を作成するかというと、作成しないケースが大半になるでしょう。これは、購入金額が小さく、かつ欲しいペンやはさみなどの購入物を自社が容易にイメージできるからです。つまり、実際に購入するものが明確である場合には提案依頼書の必要性はなく、見積書のみあれば事足ります。一方で、基幹システムなどは、購入金額も大きく、具体的な製品やサービスを手にとって確かめられるような機会はほとんどないため、何を購入すれば良いのかを把握することが困難です。そのため、提案依頼書を活用して、自社のニーズから具体的な製品やサービスに近づけていくことが必要になるのです。いわばニーズと製品およびサービスの接着剤とでも言い換えることができるかと思います。

さらに、情報システムのなかでも、提案依頼書を記載するケースとそうでないケースに分かれます。自社で購入するシステムの具体的な製品が明らかな場合と、そうでない場合です。

ここで、製造業A社が情報システム製品を購入する例をとってみてみましょう。

A社の設計部門向けに、設計支援のためのシステムとしてAutoCADを300ライセンス導入したい、というニーズがあったとします。この場合、提案依頼書を記載して、提案書と見積書を返送してもらう必要性はないと考えます。なぜならば、A社の設計部門に必要なシステムが固有名詞レベルで具体的になっており、ベンダー側の提案の幅(余地)がほぼ無いからです。つまり、自社内でシステムの選定ができてしまっているともいえます。この場合は、提案書を作成してもらう必要はなく、見積書に300ライセンス分の費用を記載してもらえれば事足りるでしょう。

一方で、B社設計部門の業務改善をおこなうために設計支援システムを実現したい、というニーズではいかがでしょうか。前述の例と異なるのは、具体的な製品名がニーズに含まれていないことと、設計支援システムの定義がとても広いことです。設計支援システムには、たとえば、パソコン上で設計図面が作成できる製品、設計部品の情報をマスタ化して設計部門内で共有できる製品、図面のバージョン管理ができる製品、図面をクライアント先でタブレット上に提示できる仕組み、などのように方策に幅が出てきます。これら複数の仕様を満たせる製品およびサービス、またはそれらの組み合わせをソフトウェア開発会社から提案してもらえることは非常に有益となりますので、提案依頼書を書いたほうが良いと判断できるでしょう。上記でみたとおり、具体的な購入製品やサービスが事前にわからない場合に提案依頼書を作成する意義があるといえます。

以上のように、必要なシステムのケースによって、提案依頼書の必要性が決まってきます。

では、さらに話を掘り下げて、提案依頼書を作成すると自社にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。次の章で、提案依頼書が必要な4つの理由についてみてみましょう。

提案依頼書をなぜ作成するのか

提案依頼書をなぜ作成するのか、そのメリットを見てみましょう。

前章で提案依頼書を書くケースとそうでないケースについて述べましたが、実際に提案依頼書を書くことで自社にどのようなメリットがあるのでしょうか。提案依頼書には自社のニーズを網羅的に、かつ社外の担当者がみても理解できるように記載しなければならないので、作成するために時間と労力が必要となります。さらに、社外とのソフトウェア開発会社との調整も必要となります。これらの手間と時間をかけてまでも作成する提案依頼書のメリットを具体的に4つあげてみます。

  • 必要なシステムの仕様を整理できる
  • 各社に統一された仕様を提示できる
  • ソフトウェア開発会社から具体的かつ精緻な提案と見積りをもらえる
  • 提案の評価にかかる時間と疲労を低減できる

上記について、ひとつずつ詳しく見てみましょう。

  • 必要なシステムの仕様を整理できる

一つ目に、必要なシステムの仕様を整理できる、というメリットが挙げられます。いいかえれば、本当にほしいものを明らかにできる、ということです。提案依頼書を作成せずにシステムを選定しようとすると、ソフトウェア開発会社とあいまいな仕様を口頭ベースでやりとりして、本当にほしいものとは異なる製品やサービスを導入することになりがちです。ソフトウェア開発会社とコンタクトする前に自社の仕様を煮詰めておくことができるのです。

また、提案依頼書が外部の目にさらされるということから、仕様を明確に提示しようという意識が働き、必要な仕様をもれなく、かつ適切な言葉で仕様を記載することができます。必要な仕様をもれなく記載することで、後から見積もりが追加になる、あるいは提案された製品では実現不可能であることが後段で判明する、といったリスクを避けられます。また、自社に不要な仕様が無駄に含まれている場合は、想定以上に高機能な製品やサービスが提案され、使われない機能が多くなる、費用対効果が悪化するなどといった弊害がでてきます。このように、提案依頼書を記載することで、仕様を漏れ無く、無駄なく、適切な言葉で整理することができます。以上が一つ目のメリットです。

  • 各社に統一された仕様を提示できる

二つ目に、提案依頼書を送付する相手に対して、統一された仕様を提示することができるというメリットがあります。提案依頼書を用いて各社へ仕様を提示することで、同一の仕様を効率的に共有することができます。統一された仕様が提示できると、各社から提案される製品およびサービスのばらつきをおさえ、比較検討の精度を高めることが可能になります。一方で、提案依頼書を活用せずに、打ち合わせなどでソフトウェア開発会社に仕様を伝えると、A社には伝えていない仕様を、B社との打ち合わせの中では必要と言ってしまった、など各社統一された仕様を提示することができず、提案される製品やサービスのレベルにバラつきがでてしまいます。また、各社との打ち合わせに時間が必要となるため、会議調整と実際の会議時間とで、提案依頼にかかる時間が増えてしまいます。提案依頼書を作成することで、統一された仕様を効率的に各社へ伝達することができます。

  • ソフトウェア開発会社から具体的かつ精緻な提案と見積りをもらえる

三つ目に、ソフトウェア開発会社から具体的かつ精緻な提案と見積りをもらえるというメリットがあります。仕様が明文化されていることにより、ソフトウェア開発会社が仕様を満たすための具体的な検討が可能となり、精度の高い提案と見積りが期待できます。

例えば、基幹システム刷新の提案依頼書を例にあげてみましょう。基幹システムに求める仕様を提案依頼書に明文化することで、ERPパッケージ標準で実現できる仕様と、追加開発いわゆるアドオン開発で実現できる仕様を、提案依頼のタイミングで分類することが可能となります。これにより、アドオン開発部分の費用と期間をソフトウェア開発会社が見積もることができ、全体にかかる予算をおおむね把握することが可能になります。ここで、”おおむね”把握することができる、と記載したのは、やはり要件定義を踏まえないと、実際の見積り金額を把握することはできないという事実があるからです。なお、提案依頼期間中にソフトウェア開発会社からの質問を受け付けることで、各社の認識を深め、提案および見積りの精度を高めることが可能です。一般的に提案依頼のタイミングにおいて1円のずれも無い見積りを提示してもらうことは難しいですが、概ね妥当な見積りを提案依頼の段階で算出してもらうことは可能となりますので、予算確保や社内稟議を挙げるための大切な情報を精度高く得ることができるようになります。

  • 提案の評価にかかる時間と疲労を低減できる

4つ目に、提案の評価にかかる時間と疲労を低減できるというメリットがあげられます。基幹システムの提案書をご覧になったことがある方は経験があるかと思いますが、提案書の枚数がゆうに100ページを超え、ときには300から400ページに至ることがあります。これだけ膨大な情報を数社分読み解き、評価するだけでも膨大な作業になります。そこで、提案依頼書に、ソフトウェア開発会社から提案してもらいたい内容を指示しておくことで、評価作業を効率よく進めることができるようになります。具体的には、以下の項目を提案依頼書に記載することで、提案の評価にかかる時間と疲労を大幅に低減することができます。

1.提案書の形式と章立て

2.表形式の仕様一覧

3.見積書のフォーマット提示

具体的にみてみましょう。

一つ目は提案書の形式と章立てです。提案書の形式については、どのようなファイル形式でもらうかを指定することで、提案書を並べて読むときに比較がしやすくなります。PDF形式を避け、PowerPointやWord形式で提示してもらうことで、社内稟議資料に使い回しができ、円滑に社内調整を進めることが可能になります。さらに、提案書の章立てを指定することで、400ページの提案書のどこに何が記載されているかを、効率よく探しだし、かつ他社との比較がしやすくなります。これで、提案書を読み込み、比較する時間と疲労を低減することができます。

二つ目は、表形式の仕様一覧です。表形式で仕様を提示することで、各社の実現度合いを定量的に評価することができます。たとえば、提案された製品が標準機能で実現できる仕様には◯を、アドオン開発をもって実現できる場合には△を、全く実現できない場合には×をソフトウェア開発会社に記入してもらうことで、それぞれの記号を数値変換して、仕様の実現度合いを定量的に測定することが可能になり、評価にかかる時間を削減でき、かつ客観的な評価を実現できます。

三つ目は、見積書のフォーマット提示です。初期費用や運用費用、ハードの費用やソフトの費用、人件費など、見積書のフォーマットを予め提示することにより、各社の金額を容易に比較することができるようになります。

このように、提案依頼書に提案書の記載内容や記載方法を指示することで、評価にかかる時間と疲労を大幅に低減することができるようになるのです。

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