サムアルトマンとイーロンマスクによる人工知能研究の全貌

 addlight journal 編集部

こんにちは。米国のシード・アクセラレータのトップに君臨するY Combinator(以下YC)より、2015年12月11日(PT)に、人工知能に関する研究機関「Open AI」を開始する旨の発表がありました。

Open AIの枠組みとしては、少し前のYCのブログにて発表されたYC Reseach(以下YCR)の最初のプログラムとして取り組む形になるようです。YCのミッションは、できる限りのイノベーションを可能にすることであり、その手段としてスタートアップへの投資があります。一方で、特定の企業が独占的に行うべきでない技術開発などについては、別の手段で取り組む必要があり、その手段としてYCは非営利の研究機関YCRによる取り組みを開始したとのことです。

YCRはYCのスタートアップを助けることがゴールではなく、世の中のテクノロジーを更に進展させることにあります。YCRの知的財産は基本的にオープンに利用でき、他の研究機関との人達とも自由に連携できます。YCRにはまずSam Altmanが個人的に10M USDの寄付を行い、YCRの研究者はYCに完全雇用される形になり給与に加えYCの株式をも報酬として得ることができるそうです。


そのようなYCRの最初の取り組みとして選ばれたテーマが人工知能であり、そのもとで設立される新しい研究機関が、今回発表されたOpen AIです。

Open AIは、YCのSam AltmanとTesla MotorsのElon Muskが共同代表をつとめ、機械学習に詳しいトロント大学のIlya Sutskever教授や、元StripeのCTOでもあるGreg Brockmanらが研究を牽引することになります。スポンサーとしては、他にPeter ThielやReid Hoffmanなどのいわゆるpaypalマフィアも参画し、総額で1B USDが出資される予定とのこと。

Open AIのウェブサイトによると、ここでの人工知能研究は営利目的から解放され、人類の前向きな進歩にフォーカスすることになります。人工知能の研究は、数年前よりディープ・ラーニングというテクノロジーにより目覚ましい進展がなされ、手動でのプログラム設計から、データから自律的に学習し進化することができるようになりました。このテクノロジーは、画像認識・機械翻訳・自然言語処理などの分野において目覚ましい結果を出しはじめています。

人間レベルの人工知能がいつ登場するか予測することは困難ですが、人工知能の脅威は、以前よりホーキング博士などにより警鐘が鳴らされています。Open AIでは、コンピュータが人間を超える、いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)の際に、Open AIのような人工知能研究を主導する研究機関によって、個々の利益を超えてより良い結果を導くことが重要であると考えているようです。


人工知能については、アメリカの大企業であるGoogleやFacebookにより多額の研究投資がなされている他、日本においてもトヨタやリクルートなどの企業がすでに社内での大規模な研究を開始しています。このような個別企業の取り組みと合わせて、今回のOpen AIのような共同研究などの進展により、人工知能の領域は短期間での更なる進化が期待できます。Open AIの今後の活動及び人工知能研究のこれからの展開にますます注目したいと思います。